アメリカ村草創期と「VESPA SHOP」

1976年、材木倉庫だった建物に、

サーフショップや古着店、カフェなどが次々とオープンし、

若者の街として盛り上がりつつあったアメリカ村の草創期。

イタリアのスクーター・VESPAを扱うお店として、

当店の前身「VESPA SHOP」がオープンしたのは、そんな時期でした。

創業者である父は、デザインやスタイルに対する鋭い審美眼の持ち主。

「シンプルで、美しく、唯一無二の個性を持つモノ」を扱いたいという強い想いは、

いつしか商品開発へ注がれるようになります。

そこで目に留まったのが自転車です。

ゼロから開発可能な乗り物である自転車は、

自店の美意識を表現するキャンパスとして最適なものでした。

フレームを制作してくれる日本のビルダーの協力を得て、

初のオリジナル自転車として生まれたのが「Collection」です。

目指したものは「SIMPLE & SMART」。

ムダを省き、洗練されたフォルムを持つ自転車です。

ハンドルやサドルなどのパーツをお客さまが選べるうえ、

手に取りやすいように価格も安価に設定。

その後、フレーム塗装のカラーオーダーも可能となり、

お客さまだけの自転車を生み出す独自のスタイルが完成しました。

父の情熱が注がれた「Collection」は、瞬く間に人気を博し、

走る姿を見かけない日はないほど、アメリカ村では定番の自転車に。

当時を知る人からは「初任給で買った憧れの自転車」と言われるほど、

感度の高い若者たちに受け入れられました。

人生に寄り添う自転車を

2004年、「VESPA SHOP」は惜しまれながらも閉店。

約30年の歴史に幕を降ろしました。

しかし、「父の想いと自転車を受け継ぎたい」と、

2016年、屋号を「PALM GARAGE」と改め、

娘である現店主が同じ場所、同じコンセプトを継承して再オープン。

「SIMPLE & SMART」のモットーはそのままに、

現代に合わせて自転車をアップデートしながら、

さまざまなオリジナル自転車をお届けしています。

もう一つ、父から受け継いだ大切な想いがあります。

それは、「一生を共にできる自転車であること」。

長く乗り続けることで、体の一部になるような自転車です。

フレームの品質はもちろん、信頼できるパーツを用い、

一台ずつ丁寧に組み立てています。

 創業当時と比べアメリカ村の風景は変わってしまいましたが、

感度が高く、こだわりを持つ人が集う街であることは変わりません。

「自分だけの自転車が欲しい」、「良いものに長く乗りたい」と、

願う人たちの人生に寄り添うような、自転車店でありたいと思います。